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EBMに基づく診療ガイドライン


● 疼痛の治療


診断を確定せずに行う疼痛の経験的治療
(Empirical treatment of pain symptoms without a definitive diagnosis)

GPP 子宮内膜症性と推測される疼痛を、診断を確定せずに経験的治療をするなら、カウンセリング、適切な鎮痛剤、栄養学的療法、プロゲスチン〔J注・黄体ホルモン剤〕、あるいは混合型経口避妊薬(COC)である〔J注:COCはピルのことで、以後は単純にピルと訳す。混合型とはエストロゲンとプロゲスチンの合剤のことで、経口避妊薬にはプロゲスチン単剤のものがあるので、区別した表現〕。
ピルは、通常使用〔J注:3週間実薬1週間休薬〕、連続使用、3周期連続使用のどれをとるべきか、不明確である。
GnRHアゴニストを使用してもよいが、この種の薬剤はかなり高額だし、副作用がより多く、骨密度への悪影響が懸念される。

J注:empirical treatmentは、検査結果をのんびり待っていられない期間の緊急的経験的処置のような意味だから、内膜症が推測される患者の疼痛を軽減してあげるために、とりあえず治療することで、臨床診断のまま漫然と続けてよいという意味ではない。
また、確定診断していないのだから、より低リスクの治療が良く、かつ早くQOLが改善できる治療が良いわけで、世界的に第1選択は低用量ピルか超低用量ピルかプロゲスチン。 ガイドラインの「主たる結論」や「診断」では、「月経血を減少させるホルモン剤で治療」と、ピルとプロゲスチンだと明示している。

ピルは服用すぐの排卵から完全停止できる(06年発表の改訂ピルガイドラインで初日服用指示は消えた。多い日が過ぎた4~5日目開始が快適で、初日服用はしんどい)。
また、子宮内膜が脱落膜化壊死吸収される。 また、COX2を減少させてプロスタグランジン作用(痛みの原因の1つ)を改善し、IL-6やIL-8などを減少させて炎症状態を改善する。
 そうして、子宮収縮の緩和、骨盤内うっ血(虚血)の改善、子宮内膜の減量、腹腔内環境の改善、腹膜病変の萎縮(増殖抑制)などで、最初の周期から慢性骨盤痛(月経時以外の下腹部痛)ほか諸症状が緩和し、最初の消退出血から月経痛が緩和する。
日本のルナベルの治験でチョコ収縮も証明された。
さらに、エストロゲンは適量で供給され続けるので、骨・血管・脳機能ほか心身は保護される。 低リスクで安価だから、基本的に何年でも使える。 海外子宮内膜症著名医は、アンドロゲン(男性ホルモン)作用の強いピルを推薦する。

いっぽうのGnRHアゴニストは、外科的卵巣摘出(根治手術)に代わる可逆的な去勢であるだけでなく、フレアアップで2~3週間も病巣と症状が悪化する(JEMA相談では副作用としてのチョコ破裂は1日目~5日目以内ばかり)。 その後、脳下垂体系抑制による去勢レベルが延々と続き、副作用が多種多発してQOLは低下する。
骨量減少は故杉本修氏の著書によると1ヶ月1%。 脂質代謝の悪化と血管内皮機能低下で血管が老化する。 脳下垂体系の他のホルモンに影響し、糖尿病や甲状腺機能異常もある。 間質性肺炎・黄疸・血栓症・脳梗塞・狭心症・心筋梗塞・脱毛・うつなどが重大な副作用として添付文書に書かれている。
 うつ発生はJEMA06年データで28%、自殺念慮(自殺したいと思う)が15.7%、自殺企図(自殺しようとした)が2.1%もある(サポ通6号6ページ参照)。 かつ慢性疾患では類を見ない異常な高価格。〕




確定診断された子宮内膜症性疼痛の治療
(Treatment of endometriosis-associated pain in confirmed disease)

非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)
A 非ステロイド性抗炎症剤(とくにナプロキセン)が、子宮内膜症性疼痛の管理に有効であるかどうかを示す決定的ではないエビデンスがある。 信頼度1a

J注:副作用に関する枠外注がなくなった。〕



ホルモン治療
A 6ヶ月の排卵抑制は子宮内膜症性疼痛を軽減する。
試験データのあるホルモン治療(ピル、ダナゾール、ゲストリノン、MPA、GnRHアゴニスト)は、効果は同等であるが、副作用とコストの側面は異なる。
J注:海外では患者にも医療者にも常識だが、薬物治療とは月経を止めることではなく、排卵を止めること。日本だけ、月経を止めましょうと医師がまだ言う。〕
信頼度1a

J注:アロマターゼ阻害剤に関する枠外注がなくなった。〕

J注:海外では患者にも医療者にも常識だが、薬物治療とは月経を止めることではなく、排卵を止めること。日本だけ、月経を止めましょうと言う医師がまだいる。〕


A レボノルゲストレルの子宮内システム(LNG-IUS)は、子宮内膜症性疼痛を軽減する。 信頼度1a

J注:LNG-IUSの論文に関する枠外注がなくなった。〕

J注:レボノルゲストレル(LNG)は第2世代プロゲスチン。製品名はミレーナでバイエル(旧シエーリング)製。排卵は止まらないが避妊も治療もできる。不正出血が連日半年などあるがしだいに減っていく。医師が子宮内に挿入し、うまく納まっていると5年もつ。07年春から自費で使えるが、自由診療なので7万~15万円ほどする。〕



GnRHアゴニストの治療期間
A GnRHアゴニストの3ヶ月治療は、6ヶ月治療と同じくらい疼痛軽減で有効であろう。 信頼度1b

J注:最大骨密度に達する18~20代前半までと、骨密度減少時代の40代は、共に使用を控えたほうが安全。40代の逃げ込み療法というのは、近年の更年期・閉経後医学でのエストロゲン作用の重要視と、相反する。〕


アドバック療法によるGnRHアゴニスト治療
A エストロゲンやプロゲスチンを加えるアドバック療法は、疼痛軽減や骨密度保護に、2年までは効果的で安全だと思える。
ただし、プロゲスチン単独のアドバック療法は骨密度を保護しない。
しかし、最大骨密度に達していない女性への使用は、慎重になされるべきである。
信頼度1a

J注:欧米ではG薬ではアドバックは必須。最大骨密度に達する18~20代前半までだけでなく、骨密度減少時代の40代も、重症者以外は共に使用を控えたほうが安全だろう。〕


手術治療
GPP 適切な患者同意を得る前提で、腹腔鏡で診断すると同時に、確認された子宮内膜症の重症度によっては、病巣を外科的に除去することが理想的手順である。
A 軽症から中等症では、腹腔鏡での病巣焼灼と同時に腹腔鏡下仙骨子宮靭帯切断術(LUNA)を加えると、診断的腹腔鏡〔J注:見るだけの手術〕と比べて、術後6ヶ月の時点で子宮内膜症性疼痛(endometriosis-associated pain)が軽減している。
軽症では効果がほとんどない。
しかし、LUNA自体は子宮内膜症に伴う月経困難症(dysmenorrhoea associated with endometriosis)には無効なので、LUNAが必要というエビデンスはない。
信頼度1b

子宮固定を支持するデータはないが、症例によっては、特に重症月経困難症に仙骨前神経叢切断術(PNS)〔J注:仙骨子宮靭帯とは別の神経が集まる部分〕は、一定の役割をもつ可能性がある。


GPP 重症または深部浸潤型における子宮内膜症性疼痛は、全病巣を除去することで軽減できる〔J注:保存手術〕。
もし子宮摘出を考えるなら〔J注:準根治手術〕、すべての子宮内膜症組織を同時に除去するという前提で、両側卵管卵巣切除を考慮すべきである。
両側卵管卵巣切除〔J注:根治手術〕は疼痛を軽減するであろうし、将来の手術機会を少なくするであろう。

J注:JEMA06年データ(確定・過去5年・331人)では、あらゆる薬物治療と手術治療のなかで、「最も効果的だった治療」の1位は準根治手術、2位は腹腔鏡保存手術、3位4位は少数経験者だが神経ブロック、根治手術で、5位が低用量ピル、6位が開腹保存手術(サポーター通信6号10ページ参照)。〕



術前治療
A 術前のホルモン治療はrAFSスコア〔J注:腹腔内の病巣と癒着の点数〕を改善するが、疼痛軽減などのアウトカム〔J注:結果、成果〕に対する効果についてのエビデンスは不十分である。 信頼度1a


術後治療
A 手術のみ、あるいは手術+プラセボ〔J注:偽薬〕と比べて、術後のホルモン治療は、12あるいは24ヶ月後の疼痛再発時に大きな軽減をもたらさず、再発に対する効果もない。 信頼度1a

上記の引用されたコクラン・レビューは、術後6ヶ月のGnRHアゴニスト治療の2つの研究に基づくが、さらなる研究が明らかに必要だと指摘している。
子宮内膜症は慢性エストロゲン依存性疾患であり、多くの女性にとって、さらなるホルモン治療がしばしば必要とされる。
小さなRCT〔J注:無作為化比較試験〕によると、子宮内膜症性疼痛のための腹腔鏡手術後に挿入されたLNG-IUS〔J注:レボノルゲストレル含有の避妊用リング、ミレーナ〕は、1年のフォローアップの結果、中等度から重症の月経困難症(dysmenorrhoea)の再発リスクを顕著に減らした。

J注:記2項目の、術前ホルモン治療と術後ホルモン治療とも疼痛にも再発にも効果はないというのは、前回2006年改訂の目玉で、今回も温存されている。ただし、枠外注にもあるように、術後に関しては何もしないと内膜症はすくすく育つわけで、やはり排卵抑制は意味があるはず。〕


ホルモン補充療法
C ホルモン補充療法(HRT)は、HRT期間中に全体的な健康利益と再発の少リスクを与えるものとして、若年女性の卵巣完全摘出後に推奨されるが、方法は不明確である。
子宮摘出後にプロゲスチンは不要だが、残存病変があれば、それに対するエストロゲンの悪影響を抑制する。
しかしながら、再発と悪性化を避けるというこの理論的なベネフィットは、エストロゲン・プロゲスチン合剤HRTおよびTiboloneで報告された乳がんリスクの上昇などと、バランスをもって考慮されなければならない。
信頼度4

J注:記文中の「乳がんリスク」は、2006年版では「乳がんリスクの上昇」だった(increase in がなくなった)。〕

J注:2年以降のHRTに関する米国WHIデータによる問題提起は(乳がんと心血管疾患が増加、大腸がんと骨折は減少)、最近の再検討で、年代別で全く違うとわかり、50代や閉経後10年以内なら、乳がんと冠動脈疾患(心筋梗塞など)はプラセボ群より4分の1も少なかった。冠動脈疾患は60代で1割増加、70代は3割近く増加。脳卒中は有意ではないが、50代なら3割減少だった。また、エストロゲンだけ補充するERTでは、乳がんは7.1年間で4分の1も少なく、冠動脈疾患は1割減少、静脈血栓症も経皮エストロゲン剤なら1割減少だった。WHIデータではHRT合剤のprempro(E剤:プレマリン、P剤:プロベラ)だけが用いられ、プレマリンと特にプロベラの問題であった部分もある。〕

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