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子宮内膜症とは?

1.女性ホルモンと月経 2.子宮内膜症ってどんな病気 3.子宮内膜症の症状 4.子宮内膜症の医療、診断と治療

3.子宮内膜症の症状

1)痛み

世界子宮内膜症学会では、子宮内膜症を「再発性の慢性疼痛疾患」と表現しています。疼痛というのは、強くて継続する痛みというような意味です。「痛み」こそ、子宮内膜症の女性たちを最も悩ませ、QOL(生命、人生、生活の質)を低下させてしまう最大の症状で、その種類はいろいろあります。


(図2-1)自覚症状(日本の内膜症の自覚症状の決定版)2006年データ

<1>子宮内膜症の自覚症状のJEMAデータ

JEMAが1996年8月に実施した、136項目の大規模患者実態調査(確定診断者325人 臨床診断者378人)の重要なデータの一つが、「子宮内膜症の自覚症状」(図2)のグラフです

厚生省子宮内膜症研究班が98年3月にまとめた調査データでも、月経痛はJEMAデータと同レベルの88%でしたが、性交痛と排便痛を合わせて聞いた数値は30%でした。この2つを合わせて聞くこと自体不適切ですが、医療者に診察室で聞かれても、この種の痛みについては女性たちが表現しづらいことを反映しています。アメリカの子宮内膜症協会(EA)が80年に3,000人規模データ、98年に4000人規模データを取っていますが、JEMAデータと非常によく似た数値が並びます

<2>月経痛、月経時以外の下腹部痛、腰痛など

まず、「月経痛」は9割の人にありました。「月経時以外の下腹部痛」も7割の人にありました。こういう痛みがどのくらい続くのかというと、4週間の月経サイクルの中で、ほぼ毎日痛いという人が1割弱、2週間以上痛む人は3割、1週間以上痛む人なら7割にもなります。月経時以外の下腹部痛とは、月経が終わって排卵に向かっていく間も痛かったり、月経が始まる数日前から痛くなるなどです。
また、下腹部の重い痛みには「腰痛」が伴うことが多くなりますし、癒着も腰痛に関係しているようです。

痛みの程度を調べると、JEMAデータでは、救急車で運ばれた経験のある人が1割、坐薬などの鎮痛剤を使っても効かないという人が4人に1人もおり、結局、基本的生活ができずに寝込む日がある人は7割にものぼりました。その一方で、鎮痛剤を使わずにすむとか全く痛くないという人も、合わせて1割いました。

<3>性交痛、排便痛

以上のような痛みは子宮内膜症がなくても起こるため、自分が子宮内膜症かどうかの判断は難しいですが、「性交痛」と「排便痛」は子宮内膜症にかなり特徴的なものです(それでも他の原因も考えられます)。

<4>痛みの原因

痛みの原因はいろいろあるらしく、その正体の全容解明はできていません。まず、病変そのものが周囲の組織や微少神経を損傷して痛みます。また、病変はやわらかい状態から年月をかけて硬く変化していくので、しだいに周囲をひきつれさせて痛みます。すると、日常的な腸のぜん動運動やセックスなどの動きでも、ひっぱられたりのばされたりして痛みます。さまざまな作用のあるプロスタグランジン(※4)という化学物質が、通常より多く分泌されていることが一つの原因だと言われています。また、癒着が卵巣付近にあると、卵胞が育ったり排卵したりする時に無理がかかって痛んだり、臓器が癒着していることで引っ張られて痛んだりします。病変の出血などが正常な腹膜に触れる痛みもあります(腹膜は刺激に敏感)。また癒着により血流が減って(虚血)も痛みます。

子宮内膜症と関係のない「月経困難症(通常の生活に支障をきたすほどの月経痛)」という状態があり、自覚症状が似ていて診断の見分けが難しいため、特に若い世代で間違われることがよくあります。ただし、子宮内膜症があってもなくても、出産の経験のない女性は子宮の出口(子宮腟部)が狭くて堅いため、月経がそこを通って出ていこうとするだけで強く痛むことも多いです。また月経の頃には、子宮やその周辺は血管が豊富になって血液が多く存在するため、うっ血した状態になって痛むというのもあります。

市販の鎮痛剤では収まらないほどの痛みがあれば、何らかの問題があるという証拠ですから、良い診断を受けたほうがいいでしょう。

(※4)プロスタグランジン  複数ある中で、最も一般的なものはプロスタグランジンF2αで、平滑筋を収縮させる作用がある。子宮を含めて内臓はすべて平滑筋だから、この分泌が多すぎるとみんな余計に収縮されて痛む。しかし、この収縮作用はふだんは必要なもので、排卵させるのも月経を排出するのも、赤ちゃんを分娩するのもこの物質が関係している。高温期の中頃から月経期まで分泌量の多い状態が続く。子宮内膜症の病変部分でも独自に分泌しているとも言われ、子宮内膜症の女性は分泌量が多くなるらしい。

2)不妊状態

痛みと並ぶもう一つの大きな問題は、ほしいのに子どもができないという「不妊状態」で、JEMA調査では約半数の女性が悩んでいました。ただ、子宮内膜症と不妊の関係は難しく、原因結果の議論はハッキリしません。最近では、子宮内膜症になる様々な要因と不妊になる様々な要因とは似ている部分が多く、この2つの状態は併発していると考えるようになってきています。

子宮内膜症の癒着のために卵巣と卵管の動きが低下して不妊になるというのは明らかですが、そういう物理的要因だけでなく、子宮内膜症の病変がさまざまなサイトカイン(人間の身体には必要なもので誰にもある)という化学物質のバランスを崩しているという、化学的要因も大きいようです。

3)自覚症状と病状(実際の病変状態)の間に法則性が見つからない

様々な症状の原因はそれぞれに違っていますし、症状の程度も子宮内膜症の病変の量とは比例しません。ほんの少ししか病変のない人でも、痛みがひどかったり、不妊であったりする一方で、下腹部の臓器が見分けがつかないほど癒着が進んでいても、あまり痛くなかったり、不妊でなかったりというようなことはよくあり、まさに謎の多い病気です。また、こういうことが診断を難しくしている背景にもなってしまいます。

4)月経前症候群(PMS)

子宮内膜症と直接の関係はありませんが、たいていの女性が経験している「月経前症候群(PMS)」を知っておいて下さい。月経が始まる1週間ほど前、つまり高温期の中頃から月経の初日にかけて、数えあげれば150項目にもなるというほどの様々な心身の症状が起こることで、月経が始まるとウソのように消えていきます。個人によって程度の差が大きいようです。むくむ、乳房がはる、尿が減る、体重が増える、頭痛や吐き気、便秘などに代表される身体的症状と、イライラする、憂鬱になる、涙もろくなる、眠くなる、不安、疲労感などの精神神経的症状とがあります。この中には、プロゲステロン(黄体ホルモン)の水分貯留作用の影響で起こっているものがあるようです。また、最近では、セロトニンとかβエンドルフィンなどの脳内化学物質の分泌量が、この時期に急激に下がるために起こることもわかってきました。

対処の方法としては、時期が前もって分かりますから、強いストレスは避けてリラックスした生活をおくることが基本です。水分と塩分をややひかえたり(生命維持に必須の要素ですから程度をわきまえて)、刺激物の飲食をひかえたり、心地よい程度の軽いエクササイズで汗を流したり、下半身浴をしたりして、からだの内側から脳内も含めて癒すことがいいようです。

低用量ピルや漢方薬も有効ですし、とくに強い精神神経的症状には、抗鬱剤のSSRIが効果的だそうです。

注意してほしいのは、このPMSでは強い下腹部痛はあまり起こらないということです。この時期に強い下腹部痛がよく起これば、それは誰にでも起こるPMSではなく、子宮内膜症を疑ったほうがいいでしょう。また反対に、子宮内膜症の女性は、PMSの様々な不快症状まで子宮内膜症のせいだと考えてしまうと、その時期に鎮痛剤を飲んでも、PMSの症状の部分には効かないということが起こってしまいます。


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