JEMAの本と発行物
子宮内膜症は、世界中の一億人ほどの少女や女性のQOL(生命・生活・人生の質)を長く脅かしている、現代の慢性疾患のひとつです。なぜ、この病気はこれほどまでにしんどいのか。その理由は二つあります。一つは、子宮内膜症のキャラクターそのものが、許しがたいほどに複雑かつ不明だからです。そして、もう一つの理由は、最初の理由ゆえに、医療にできることはさほど多くはないという世界的な現実のなかで、日本の医療環境が、欧米先進諸国と比べて整っていないという事実です(すべての科に共通)。 日本子宮内膜症協会(JEMA)は、94年に子宮内膜症の当事者たちが設立した非営利組織(NPO)です。この病気の国内外の医学・医療情報をつかむにつれ、何千人という女性たちの実態を把握するにつれ、日本の子宮内膜症に悩む女性たちに、早く、一日でも早く、たくさんのほんとうのことを知らせるべきだという使命感は、燃えあがるばかりでした。そして、設立から二年で強行したのが全国患者実態調査、その一年半後に産み出した書籍が、『子宮内膜症の事実』です。すると、これらは、私たちの予想をはるかに越えて、日本の子宮内膜症事情を動かし始める点火剤となっていきました。まず、もっとほんとうのことを知ろうと会員が増えました。そして、専門医たちが振り向いたのです。 しかし、次のジレンマはすぐに始まりました。100万人以上と言われるすべての女性たちと、12000人のすべての産婦人科医には、まだ、手が届かない。 94年以降、女性誌や健康誌では子宮内膜症特集がときどき打たれますが、その内容たるや、ますますJEMAを奮い立たせるものがほとんどです。まず、医療にもっとも要求される的確な診断力や治療の技術力よりも、女性によりそう赤ひげ先生やアメニティーランドのような医院ばかりが登場すること。こうなる理由は、女性を幼稚な対象と見ていることと、女性疾患の最大の問題を「子宮の機能と価値(社会通念でしかない)が損なわれること」と捉えているからでしょう。また、マスコミには〇〇ランキングが多彩に報道されるのに、命にかかわる医療だけが、どこでも同じとしか受け取れない誌面になっており、解説内容も旧態依然であること。こちらの理由は、何らかの判断をするに足る情報をもっていないからでしょう。こうして、月経痛を気にして病院に行く女性は増えましたが、薬漬けにあったり、つまらない手術を受けてしまったりというお話は、後を断ちません。 日本でも、世界に負けず、さまざまな分野の市民活動がほんとうのことを洗い出し続けています。そして、知り得た貴重な情報を、よりよい市民生活の創造のために公開しています。本書は、女性医療の分野でそれを成しました。本書の内容は、すべて、JEMAが日本の子宮内膜症の女性から得た現実情報を素材に(真の現状把握)、世界の最新医学・医療情報と照らし合わせて論を展開しています。公開する情報たちの選定基準は、がんの告知や、あらゆる情報開示を求める市民活動に準じています。 本書は、すべての子宮内膜症の女性や家族に読んでもらう必読書であると同時に、すべての産婦人科医・医療従事者・医療企業・医学生・厚生省にも読んでもらいたい、当事者エビデンス(患者・医療利用者にとって意味ある根拠)による新タイプの教科書です。とくに、子宮内膜症のあなたには、何度か読み返すことで、あしたからの自分と、子宮内膜症と、医療の関係をつむぎなおす、繭玉(まゆだま)にしてほしいのです。 日本子宮内膜症協会(JEMA) 代表 いぬい益美 --+++ 目 次 +++--第1章 敵は自分のなかの子宮内膜症ではない
第2章 子宮内膜症の医学(病気の正体)を知ろう
第3章 子宮内膜症の医療(病院ができること)を知ろう
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