2007105

テレビ朝日朝日放送(通称:ABC)
たけしの本当は怖い家庭の医学

制作責任者 殿

 

日本子宮内膜症協会(JEMA

代表 いぬい益美

大阪市中央区日本橋1-20-2-301

TEL/FAX 06-6647-1506(TEL金午後)

URL:http://www.iemanet.org

E-mail: info-2@jemanet.org

 

821日放送「本当は怖い乾いた咳」への意見書

 

はじめまして、私たちは子宮内膜症の患者団体の、日本子宮内膜症協会(JEMA)です(設立は947月、会員制は03年夏にやめ、以後サポーター制で約1100人)。

JEMAがどんな団体かご理解頂くのは難しいかと思いますが、子宮内膜症に関する学会等において専門医と同等の立場で参加し、発言しています(23年に一度の世界学会にも参加)。世界で最も信頼されている内膜症の最新診療ガイドラインはEUのもので、その翻訳版はJEMAサイトにしかなく、内膜症の学会で医師たちに配布しています。厚労省交渉では、低用量ピルの子宮内膜症治療の保険適用を勝ち取る寸前まで来ています。そのために、複数の医療企業と長年協働してきました。この事業に直接関係のない医療企業さんとの懇談も、適宜しています。日本産科婦人科学会現トップの慶応・吉村教授(JEMAのサポーターの1人)や前トップの東大・武谷教授(旧サポーターの1人)とは、長年のおつきあいです。JEMAはこうして、医学界・企業・行政を動かし、日本の子宮内膜症医療を具体的に改善してきた団体で、一般的な患者団体とは多少違います。

過去にテレビ番組に大きく抗議したのは2回あり、テレビ朝日です(朝まで生テレビ:2ヵ月後の冒頭で訂正謝罪2分、SmaSTATION:翌週の最後に訂正謝罪数秒)。

 

さて、「たけしの本当は怖い家庭の医学」で821日に放送された子宮内膜症に関する内容が、全国の子宮内膜症に悩む100万〜300万人の女性とその家族に大きな不安と誤解をもたらし、社会において子宮内膜症の女性への偏見、それに伴う雇用や婚姻等の不利益を生み出しうる内容だったことから、意見書をお送りします。

実は、「たけしの〜」が子宮内膜症を取り上げたのは当方で認知したもので過去2回あり(052月:内膜症から卵巣がんになって胸膜播種で30代死亡、0512月:芸能人SPで吉本のさゆりさん登場)、2回とも残念な内容でした。前者は今回以上に発生頻度が稀な事例を挙げて恐怖を煽っただけ、後者は同時期にさゆりさんを取り上げた番組たちのなかで驚くほど内容がなく、やはり恐怖を煽っただけでした。

 

では、次ページから問題点を解説するので、早期に適切なご返答を要望致します。

なお、本書面は、JEMAのメルマガやウェブサイトに載せる予定です。

 

 

821日放送の「本当は怖い乾いた咳」の問題点

 

1.根本的な問題:気胸は内膜症の重症化長期化の最終段階などではない

放送では、子宮内膜症(以後内膜症と略)が重症化長期化すると肺に飛ぶのが最終段階で、気胸(肺が圧力で縮むこと)になってしまい、呼吸困難や胸に激痛を感じて倒れ、肺の緊急手術が必要になった、となっていますが、全くの誤報です。

 この誤報のせいで、全国の100万〜300万人の内膜症の女性は自分もいつか気胸になると不安になり、そんな内膜症女性は雇用しない結婚相手にしない等の偏見が生まれた可能性が高いと考えます。

 

月経随伴性気胸は、通常のお腹のなかの内膜症が重症でも軽症でも、さらには全くなくても、ごくわずかな人が、胸部のどこか(横隔膜や胸膜)に内膜症病巣ができ、気胸になる疾患です。気胸発生は月経期だけでなく、排卵期になる人もいるので、月経随伴性気胸という命名は不適当で、JEMAでは子宮内膜症性気胸と表現します。

お腹に内膜症が全くなくてもなぜなるの?と不思議でしょうが、子宮は誰にでもあるわけで、その一番内側を覆っている子宮内膜細胞が、様々な原因で胸部まで移動し(血管やリンパ管を経由)、胸部のどこかに接着し、生きてしまうケースと、全く独立して胸部に内膜症病巣が自然単独発生するケースがあると言われています。

また、お腹のなかに内膜症がある人の場合は、たまたま横隔膜の腹部側(お腹の空間の天井)に病巣ができ、年月をかけて胸部側まで貫通して穴を開けたケースと、さきほどの子宮の子宮内膜が血管・リンパ管経由で胸部まで移動したケースがあると言われています。

 

お腹のなかの内膜症が重症化長期化したわかりやすいケースは、平松愛理さんや吉本のさゆりさんで、下腹部痛のない日がほとんどないという状態です。

 

ただし、平松愛理さんの場合は、問題の多い(レベルが低い、内容がよくない)外科処置を6〜7回も受けているため、人工的によけいに腹腔内に癒着が複雑に発生し(術後癒着やアルコール癒着)、モルヒネを使わないと歌えないという特異な状態になったのです。

 

吉本のさゆりさんの場合は、極度の貧血が最大問題ですが(医師が1年芸人でいられても1年後には人間じゃないと発言したこと)、多量の月経出血の原因は内膜症とは無関係で、併発していた多発性筋腫のせい、それも最大の粘膜下筋腫が子宮頸部(子宮の出口付近)にあったせいです。

痛みに関しては、テレビで聞くかぎりは04年まで一度も手術を受けていないのに、10年以上の連日の疼痛は珍しいのですが(連日痛む人は平松さんのような手術被害の人たち)、内膜症がとくに子宮と卵巣が原型をとどめず腸にベッタリ癒着していたことと、多発性筋腫の、どちらもが関わっているでしょう。

卵巣嚢腫もあったと複数の番組で聞きましたが、内膜症のチョコレート嚢胞はもちろんあったそうですが、内膜症以外の卵巣嚢腫もあったかどうかは知りません。ただし、チョコレート嚢胞もそれ以外の卵巣嚢腫も、嚢胞・嚢腫そのものが痛みを発することはなく、嚢胞・嚢腫のできた卵巣がどこかに癒着することで、卵巣の正常な働き(月経周期のなかで卵巣が23cmから45cmまで卵胞発育することや、卵巣表面がベリッと破れて2cm弱の卵胞が飛び出す排卵)がスムーズにできずに、痛みを発するのです。

 

2.基本治療は上坊医師が薦めたGnRHアゴニストではない

内膜症の基本治療は外科手術(そもそも手術しないと確定診断すらできない疾患)で、本当に内膜症なら、20歳前後〜閉経までに23回の手術が必要ですが(近年、都市部では腹腔鏡手術が主流)、上坊医師は全く解説しませんでした。

ただし、病巣を完全除去するのは不可能なため(見えない大きさの若い病巣があるし、癒着が複雑にあるとその奥の病巣は取りにくい)、術後再発率が非常に高い疾患です。

再発率が高くても、毎年手術をするなどありえないため、妊娠希望時期以外は薬物治療になりますが、薬物治療の目的は「排卵停止」で(月経停止ではない)、それができる医薬品は「ピル、GnRHアゴニスト、ダナゾール」です。ただし、どの薬も使用後に排卵復活すると、内膜症は再び動き出します(手術と違って再発ではなく再燃という)。

また、使用後の排卵復活の期間が(月経復活はその2週間後)、薬によって大きく違います(ピルは23週間で排卵復活、GnRHアゴニストは23ヶ月かかり、なかには排卵が復活せず閉経してしまう危険もある。ダナゾールは12ヶ月)。

このように、薬物治療は病巣を抑え込んでいるだけで、体内から薬効が消えてしばらくすると病巣は浮き上がってきて元の木阿弥となり、平気で進んでいくし、新たな病巣発生もよくあることです。

だから、妊娠を希望する時期以外は何年も薬物治療を続けたいのですが、以下の理由で、それが可能なのはピルだけです。

 

まず、GnRHアゴニストは劇薬指定薬で、「半年以上の使用の安全性はない」と医薬品添付文書に記載がある薬で(何歳の女性であろうと1ヶ月以内に6070代の老年期身体に変貌させる)、ダナゾールも4ヶ月使用が適正と添付文書に書いてあります(閉経前後の更年期身体に変貌させる)。

内膜症は20歳前後から閉経までの長期慢性疼痛疾患なのに、こういう4ヶ月や半年の薬物治療は無意味であるだけでなく、多種多彩な重大な副作用が多発し(医薬品添付文書には90%近い副作用発生率と明示されている)、後遺症まで起こります。

とくにGnRHアゴニストの副作用は、JEMAデータでは(96年調査703人、01年調査1073人、06年調査668人)、最新でうつが28%、自殺念慮が16%、自殺企図が2%もあり、厚労省に何らかの対処を要望しています。また、骨量低下は必発(自分では体感できない)、血管の動脈硬化変化と血管縮小(同じく体感できない)、脳機能低下(認知、判断、記憶など)も目立ちます。副作用は薬効が体内から消えれば基本的になくなるものですが、GnRHアゴニストやダナゾールの場合は後遺症として残るケースも目立ちます。

 

使用中だけ排卵停止して病巣を抑え込むだけの薬物治療で、人間の一生で最も重要な骨や血管をキッチリ老化させる医薬品が基本治療薬のはずがありませんが、日欧米の内膜症治療薬の使用比較データでは、日本は未だに欧米の2倍もGnRHアゴニストを乱用していることが、学会で指摘されています。もし、90年代に日欧米の使用比較を調査してくれていたら、もっと高い倍数だったでしょう(日本の低用量ピル導入は999月だから)。

 

残念ですが、上坊医師はこういう学会が指摘している知識のない医師です。産婦人科の診療内容は多岐に渡っており、上坊医師は悪性腫瘍の専門家ではありますが、内膜症では患者を不健康にする医師ということになります。

 

いっぽうのピルは、WHO(世界保健機関)が初経3ヶ月以降の女性なら何年使っても大丈夫と太鼓判を押す避妊薬であると同時に(高血圧、血栓症既往、ヘビースモーカーは禁止)、昔から世界中で内膜症の薬物治療の基本薬でもあるのです(昔は中用量ピル→70年代半ばから低用量ピル→90年代には超低用量ピルが登場して低用量ピルと共存)。

日本のピル事情は世界一遅れているので(北朝鮮よりはましだけどアジア諸国にも遅れている)、多少有名な上坊医師でも知識がないわけですが、世界には多種多彩なピルがあり、さらに錠剤だけでなく、子宮内に医師が挿入するIUS5年間効果持続:最近やっと日本でも認可)、貼付剤、自分で膣の奥に入れておく膣リング(3週間効果持続)などもあり、避妊で使いたい女性たちも内膜症患者も、世界が羨ましいかぎりです。

また、海外の医学教科書やピルハンドブックなどには、内膜症と診断された女性は、妊娠したい1周期前までピルを使い続けようと解説されています。単純に何年も毎月排卵することは(月経を繰り返すこと)、それほど危険なことなのです。

例えば23歳で内膜症と診断されて30歳までピルで排卵を止め続けても、やめて23週間で排卵は復活するので、妊娠には問題ありません。もし、GnRHアゴニストでこういうことをしたら(体感的副作用で絶対無理でしょうが)、廃人になるか死亡するのではないでしょうか。

 

同じ排卵を止める薬なのになぜ?と思うでしょうが、答えは簡単で、ピルだけには、女性の心身の健康維持に必須の2つの女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が、ちゃんと入っているからです。

 

もっとわかりやすい、驚くべき事例を出しましょう。

最近、性犯罪者の再犯防止に欧米では薬物虚勢が行われていることが報じられていますが(日本も小児性愛犯罪者にはそうしたほうがいいのではないかと意見が出ている)、なんとこの薬物虚勢薬が、GnRHアゴニストなのです。

内膜症に使うのは4週間持続注射で(これを36ヶ月使用)、再犯防止薬物虚勢では3ヶ月や6ヶ月持続注射が使用されるのです。ちなみに乳がんと前立腺がんの術後再発予防でも、4週間型や3ヶ月型を使って12年とがん再発予防を期待します(今上天皇が使っているのもこれ)。

命がかかっている乳がん再発予防なら、骨粗しょう症になろうが動脈硬化が進もうがうつになろうが頑張るかもしれませんが、内膜症は10代後半〜50歳前後の女性の1割が罹患する患者数が非常に多い病気で、ピル治療があるのに、なぜ日本の内膜症患者だけ性犯罪者の再犯防止薬物虚勢薬を欧米の2倍も使われないといけないのでしょうか? 

 

次に、細かいことですが、上坊医師の解説の、「鎮痛剤は炎症も一緒に抑えますから、内膜症の状態もよくします」というのは困った解説で、これを聞いた患者さんたちは、上記のGnRHアゴニスト、ダナゾール、ピル以外にも、鎮痛剤でも治療できると勘違いし、鎮痛剤だけ使って、痛みは緩和するが内膜症はすくすく育つという不幸を経験してしまいます。鎮痛剤は内膜症の「状態」を改善することはありません。内膜症の「状態」を改善するのは、「排卵停止のできる医薬品のみ」です。

ただし、同時に出ていたテロップでは、“鎮痛剤は内膜症の「症状」をよくする”と書かれており、こちらは正しい表現でした。

もちろん、内膜症では症状を緩和することも重要ですが(漢方薬も症状緩和効果のみ)、低用量ピルを使えば病巣の状態を治療し、症状も緩和できるのです(GnRHアゴニストでも病巣の状態を治療し、症状を緩和するが、大半の人が多彩な副作用に苦しみ、後遺症に悩む人まで出てくる)。

 

3.前兆の定番は「乾いた咳」ではなく「右の背中上部・肩・胸上部の疼痛」

 この番組の特徴は、病気の前触れを早く察して早期診断早期治療をしようということのようですが、月経随伴性気胸の定番の前触れは「乾いた咳」ではありません。

月経随伴性気胸の誰もが言うのは、右側の(自然気胸は左右どちらにも発生しうるが)、背中上部の奥(肩甲骨あたり)と肩、続いてその前側である胸上部や鎖骨付近の、月経期(2〜3日前からも含めて)や排卵期の突然の疼痛です(痛みの程度差は大きい)。

その結果、肺が縮めば気胸になりますが、縮む程度で呼吸苦の程度も違ってきます(呼吸不能にはならない)。この肺が縮んで気胸になっていく過程で、全員ではないですが、ポコポコとかゴボゴボなどの音を感じると書く人たちも言います。

 

JEMAサイトには非公開の他臓器子宮内膜症掲示板があり、気胸をはじめ、肺でも喀血するタイプ、腸管、泌尿器、へそ、膣ほか特殊な部位にできた内膜症の女性を日夜サポートしています。

043月から開始し、気胸は26人の参加ですが、前兆で咳が出ると書いた人は2人、たった8%に過ぎません(2000以上の全投稿をワード検索した)。

同じ肺でも喀血タイプの人は(血痰程度からコップ1杯まで吐く量には差がある)、10人中6人(60%)が月経中に12日、咳と同時に12回喀血すると書いていますが(吐くとスッキリするところが気胸タイプの何日も苦しいのと全く違う)、前兆ではなく喀血させる直接の発作です。

 

考えてみると、自然気胸や続発性気胸(肺の病気、例えば肺がんの結果で起こる気胸)は、肺全体を包んでいる肺側胸膜に病巣ができるので、肺内の空気が胸腔内(肺側胸膜と壁側胸膜の間の空間)に出て、空気圧で肺を縮めて気胸になるため、咳も出るでしょう。

月経随伴性気胸でもこのタイプの人もいますが(しかし胸腔鏡手術をしても胸膜上の病巣が見つからない人が大半)、多くの人は横隔膜(お腹と胸を上下に隔てている壁)に病巣ができ、腹腔内の空気が胸腔内に入り、肺が押し縮められて気胸になるので、これだと肺から空気がもれ出てるわけではないので、咳にはならないのではないでしょうか。

 

4.子どもができたのは肺手術と無関係

番組内のケースで子どもができる前の治療は肺の手術しか登場せず、適切な治療で子どももできると明言していましたが、内膜症で不妊になるのはお腹のなかの内膜症の影響だけなので、胸の手術は全く無関係、誤報です。

この誤報で、月経随伴性気胸の人が肺の手術で子どもができると信じたら、気の毒すぎます。なぜなら、月経随伴性気胸の場合、番組のように肺の病巣切除手術をしても、気胸は9割以上に再発し(直後の月経時再発も多い)、自然気胸より圧倒的に術後再発率が高いのに、妊娠したいがために無駄な肺の手術に挑戦するかもしれないからです。

ただし、月経随伴性気胸の患者は非常に少ないので、この誤報で影響を受ける人口は問題点の12より圧倒的に少ない(100分の1程度)とは言えます。

 

モデルどおりの実際の患者さんがいるのなら、その人はお腹も腹腔鏡手術をしたか、不妊治療をしたか、子どもを作ろうとして半年ほどできなかっただけで自然妊娠できるレベルであったか、でしょう。

そもそも不妊というのは、作ろうとして2年不妊の人を言うと医学的に決まっているので(臨床的には1年とする施設が多い)、番組のケースは不妊とは言えませんし。

 

ちなみに内膜症は明らかな不妊疾患で、不妊女性に腹腔鏡手術をしたら半分に内膜症が存在すると言われています。内膜症女性の子どもの有無は、結婚していて子どもをつくろうとする人たちの半分弱が現実です(体外受精を100回してもできない人はできない)。   

こういう厳しい情報を受け止め、欧米では無理に不妊治療はしない内膜症カップルも増えており(欧米では女性も自立して働くことが重要で、長年の疼痛管理が一番の目標)、欧米の自覚症状一覧では不妊率が低く出るようです(さらに、不妊治療は女性の健康全般を悪化し、内膜症も悪化する)。

 

5.内膜症チェック10項目の問題点

【不適切な項目】

1.        初潮が12歳以前

→そういうエビデンス(科学的根拠となる国内外データ)はない。

JEMAデータでは、96年データ(703人:12.31歳)、01年データ(1073人:12.23歳)、06年データ(668人:12.38歳)。

5.        月経のとき、血の塊が出ることがある

→血の塊が出るのは、子宮腺筋症や子宮筋腫を併発している人で、一般的な子宮内膜症では起こらない(1センチ前後の塊は女性一般でも調子によっては出る)。

6.        便秘がちである

→女性は排卵後から月経までの高温期は基本的に便秘がち

10. 月経の時、下痢をする

  →女性は月経期は基本的に軟便がち

【入れるべき項目】

・不妊状態である

 

6CGの病巣や炎症や逆流月経量があまりに大きく、怖い

CG表現で、病巣の大きさや炎症状態の大きさがあまりに大きく、恐怖を煽っているとしか思えません。

内膜症の基本病巣は腹膜病変という半球状態の袋(中に血液が溜まっていることが多い)で、mm単位から1cm前後、さらに肉眼でも腹腔鏡の拡大カメラでも見えない細胞レベルも当然あります。

気胸になる胸部の病巣も、とくに胸膜にできるものは非常に小さく発見できないことが大半です。横隔膜病巣は比較的明確に見えますが、1粒はmm単位です(複数粒集まっていることが多いようだ)。

腹膜病変の年数がたって、血液が吸収されて色素沈着状態になると、ゴマ粒大程度の平べったい点になり、それらが複数個集積した23cm程度の広がりもありますが、これは古い病巣でさほど悪さはしていないと言われています。

 

卵巣内に腹膜病変が入り込んで二次的にできる卵巣チョコレート嚢胞は、3cm6cmなどになりますが、これは血液が溜まった袋の大きさ、溜まった血液の直径であって、その血液を染み出している病巣そのものは、袋の内側の1点です。

日本だけ、チョコレート嚢胞にGnRHアゴニストを36ヶ月使わせて、6cm4cmに減って良かったねなどという医師が非常に多いですが(欧米の2倍使用の元凶)、チョコレート嚢胞は存在自体が問題なので、溜まっている血液量が多少減っても、それは薬の排卵停止作用のおかげで時間とともに水分が吸収され、血球は残るためだんだんドロドロになり、容積が多少縮んだだけのことで、血液を染み出している1点病巣は影響を受けていません。薬物治療をやめれば再増大を始めるわけで、結局、手術でその部分を切除する以外に治療法はありません(仕事や生活の関係で手術時期を何ヶ月や12年など先延ばす場合は、低用量ピルを使うとよい)。

 

また、炎症が起こっている領域を大きさで表現するのは無理で、誰も正しく範囲指定などできないでしょう。お腹のなかにmm単位の腹膜病変がポツポツと3つあっただけでも、下腹部全体がそれらの炎症の影響を受けていると言えないこともないし、腹膜病変部分だけであると言えないこともない。

 

また、月経血の逆流は数mlではないでしょうか。CGでは卵管からドクドクとあふれ出して、下腹部内を洪水のように浸していましたが、気分が悪くなりました。

そもそも、月経血の腹腔内への逆流は、卵管が通っている女性全員に毎回の月経で起こっていると言っても過言ではない、ごくありふれた現象です(マクロファージが掃除してくれている)。